若者の早期離職対策を考える

先日、キャリアコンサルティング業務でお世話になっている研修会社の担当者の方から「若者の早期離職対策」の相談がありました。担当している企業に対して若者の早期離職対策を提案したいとのことで、あらためて「若者の早期離職対策」について考えました。

若者の早期離職の理由は?

若者の早期離職の理由については、新聞やWEBで断片的な情報に頼っていたところがありましたので、今回、厚生労働省の公開情報を確認しました。

転職入職者が前職を辞めた理由

※「2019年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省 2020年9月30日発表)より

男女・各年代(19歳以下、20~24歳、25~29歳)で割合の多い上位3位に色を付けました。

「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」
「給料等収入が少なかった」
「職場の人間関係が好ましくなかった」
「仕事の内容に興味が持てなかった」          
が上位にあがっています。

2010年から毎年報告されている「子供・若者白書」(内閣府)の2018年版「就労等に関する若者(16~29歳)の意識調査の結果」では、「初職の離職理由(複数選択可)」について次のとおり報告されています。

「仕事が自分に合わなかったため」43.4%
「人間関係がよくなかったため」23.7%
「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」23.4%
「賃金がよくなかったため」20.7%          

転職した若者の前職の離職理由、あるいは、初めて就いた仕事から離職する若者の離職理由の上位は、ほぼ同じ理由になっています。

「仕事内容のミスマッチ」も含め、「会社側の処遇・待遇がよければ離職していなかった」かもしれない若者の姿がそこにあります。

しかし、実際には本人からハッキリ申し出ることは少ないと思われますので、会社は離職理由を把握することが難しいのが実情のようです。

離職防止対策にセルフ・キャリアドック制度の活用を

離職防止対策として一番効果的なことは、離職理由となる原因を解消することです。

しかし、仕事内容・給与などの労働条件は、本人から申し出があったとしても対処できないのが一般的かもしれません。

また、人間関係のように一人ひとりのコミュニケーションが背景になっていることは、すぐに解消できない可能性が高いでしょう。

そこで、私は「セルフ・キャリアドック制度」の活用をおすすめします。

セルフ・キャリアドック制度とは、「キャリアコンサルティングとキャリア研修などを組み合わせて行う、従業員のキャリア形成を促進・支援する総合的な取り組み」(厚生労働省)のことです。

人間ドックのように、従業員が定期的に自分の働き方や生き方について点検して、必要があれば活動を見直し、会社の環境整備につなげていく制度のことです。

若手や離職検討中の従業員にも効果的なセルフ・キャリアドック制度

企業が人材育成制度として導入しますので、研修・面談対象者は事前に決まっています。そのため、従業員の意識として、自分が選ばれたのは何か理由があるかもしれないという疑念は生まれず、本来期待される面談効果や個人的相談につながります。

例えば、入社して半年、2年目、3年目に、キャリアコンサルタントによるキャリコンサルティング面談を制度化します。

若手従業員は、その都度、自己理解・仕事理解を深め、あらためて課題や目標を確認することとなります。ときには、抱えていた待遇面の不満を超える、仕事への意欲が生まれるかもしれません。

また、離職を検討している従業員であれば、具体的な相談へと展開する可能性があります。面談を通して、転職環境の情報や早期離職によるデメリットなどを踏まえた、より広い視点での検討ができて、慎重な判断につながることもあるでしょう。

職場の人間関係に課題があるケースなら、キャリアコンサルタントは、守秘義務を前提として、会社側へ「コミュニケーション活性化研修」などを提案します。会社全体、あるいは上司と部下のコミュニケーションの改善などに取り組むことで、結果として、離職防止はもとより、職場風土の改善にもつながるでしょう。

私は現在、若年層を中心にキャリアコンサルティング面談を行っています。ジョブカードに基づきながら自己理解・仕事理解を深めてもらい、本人のキャリア形成の一環とした研修参加に向けた意欲の確認を目的にしています。

いつも面談の最後に、「キャリアコンサルティング面談を受けたことで、何か気づいたことはありましたか?」と質問します。そのとき、次のように答えてもらうことがあります。

「話をすることで、ジョブカードに書いたときよりも、深く振り返ることができた。仕事をもっと頑張ろうと思った」

この言葉を聞くと、キャリアコンサルタントとして、身の引き締まる思いになります。

参考:「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000192530.pdf