上司のみなさん、リーダーシップを意識していますか?

私は日本生命で営業部長を10年経験しました。当時100回締め切り(100カ月)を経験したら「一人前」と言われていましたので、一応「経験年数一人前」だったのかもしれません。しかし、振り返れば反省ばかり。その一つがリーダーシップの意識が足りなかったことです。

今回は、当時の反省を踏まえて、上司とリーダーシップの関係について考えてみました。

私は上司としてリーダーシップを意識していませんでした

リーダーシップとは、広辞苑で以下のとおり解説されています。
➀指導者としての地位、任務。指導権。
➁指導者としての素質、能力。統率力。  

リーダーシップについては関係書籍も大変多く、どのような役割が求められるのか、どんな能力が必要なのかなど、さまざまなことが示されています。

日本生命時代、営業部長の私は上司としてどのようなリーダーシップが求められるのかという意識はありませんでした。

成果を出すために何が必要かという視点で、「毎月の売上目標を達成する」「組織を維持・拡大する」ために無我夢中で仕事をしていました。目標達成による会社からの評価に関心が向いていたと思います。

「やる気づくり」「組織の人間関係の向上」「目標に向かって組織を引っ張る」など、結果としてリーダーシップを発揮していたかもしれませんが、私にはそのような認識はありませんでした。

一般的に多くの上司は自組織の成果にこだわり、自身の評価に関心があるのではないでしょうか?
リーダーシップの発揮と自身を重ねる人は、そう多くないかもしれません。

「リーダーシップ=成果を出すこと」と勘違いしていた?

私がリーダーシップに関心を持ったのは、キャリアコンサルタントの仕事を始めてからです。それまでは、リーダーシップとは特別の立場の人や有名な成功者が発揮するものというイメージをもっていたかもしれません。

会議などで「リーダーシップを発揮してください」と言われても、「成果を出してください」と勝手に変換していたような気がします。

リーダーシップについて学びを深めた今、しっかり向き合うことの重要性を感じています。それは、リーダーシップは「成果を出すことが目的ではない」ということに気づいたからです。

リーダーシップとマネジメントの違い

みなさんも「リーダーシップとマネジメントは少し違う」と聞かれたことがあるかもしれません。2人の経営学者の著書を参考に、リーダーシップとマネジメントの違いを説明してみましょう。

「マネジメントの父」といわれるP.F.ドラッカー(1909~2005)は『マネジメント【エッセンシャル版】』の中で「我々の社会は、信じられないほど短い間に組織社会になった。(中略)その組織に成果を挙げさせるものがマネジメントであり、マネジャーの力である。」と書いており、「マネジメントは、主に管理的な活動となる」と表現しています。

リーダーシップについては、ジョンP.コッター(1947~)の『リーダーシップ論』の中で、「マネジメントの手法や手順は、主として20世紀最大の進歩の一つ、大組織の出現によって生まれた。(中略)これに対してリーダーシップの役割は、変化に対処することである。」とあります。

マネジメントにおいても、変化に応じて改善することを否定するものではありません。しかし、競争と変化が厳しさを増している現代、変化に対応する強力なリーダーシップが必要になると指摘しています。

変化に対応するための主な行動として3点を挙げています。
「変革の方向を決める」
「コミュニケーションを大切にして、人々の心を一つにまとめる」
「無理やりむかわせるのではなく、人々を動機づける」

リーダーシップとマネジメントは重なる部分があり、補完関係にあるとしながらも、基本的な違いを指摘しています。

みなさんはどうお感じになりますか?

もし営業部長の私がリーダーシップに向き合っていたら

日本生命時代の営業部長の私は、
・成果を出すために組織に対して、管理・統制的な姿勢に重点を置いていたのではないか?
・働く人々とのコミュニケーションを大切に、みんなの心を一つにすることをどこまで真剣に考えていたのか?
・報奨金などのインセンティブに頼ったやる気づくりが中心だったのでは?

組織で働く人々の心に、強く焦点をあてるリーダーシップを理解したとき、自分に足りなかったものに気づきました。

もし営業部長だった私がリーダーシップを意識して職員さん(ニッセイセールスレディ)の心に、もっと焦点をあてて組織運営をしていたら、どう変わっているでしょう?

一人ひとりの職員さんとのコミュニケーションを大事にして、一人ひとりの価値観にもっと向き合いたいと思います。

営業組織だから成績評価・収入アップが効果的な動機づけだという思い込みをやめて、職員さん一人ひとりの価値観を認め、共通する価値観を探り、これを共有できる組織を目指します。

組織目標として「組織○○名達成」などの陣容拡大スローガンなどを止めて、一人ひとりの「働きがい」「生きがい」と真正面に向き合ったメッセージを発信します。

一人ひとりが自分を大切に思い、大切にできる環境づくりに協働できる組織を目指します。

何やら具体性に欠ける決意表明になってしまいましたね。

大変厳しく難しい企業環境が続く中で、上司への期待はますます高まっています。それは、上位組織からの期待もありますが、メンバーからの期待でもあります。

今ほど変化を迫られる時代はありません。

より良い変化を目指して、「リーダーシップとは何か?」「組織で働く人々の心に、より強く焦点をあてたリーダーシップとは?」ということを、少し立ち止まって考えることも重要ではないでしょうか。

参考書籍
『マネジメント【エッセンシャル版】』P.F.ドラッカー 著(ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478410233.html
『第2版 リーダーシップ論』ジョンP.コッター 著(ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478013397.html