従業員がいきいき働く、ある中小企業の素晴らしい取り組み

1年半ほど前、創業70余年の業務用食品企画製造・販売会社を訪問しました。従業員数250人ほどの会社ですが、全員がいきいき働く様子に感心しました。
そのときのことを振り返りながら、中小企業の風土と人材育成に関わる大事な取り組みについて考えたいと思います。

最悪のタイミングに訪問した私が驚愕したこと

訪問したのは年末近い週末で、通常業務に加え、「おせち料理」関係の業務もあり、一年で一番忙しいタイミングでした。

打ち合わせの流れで、専務さんに会社を案内していただきました。会議室を出て事務フロアに入った瞬間、「いらっしゃいませ」の声があちこちから聞こえてきます。しかも、従業員の方々は私に向かって一礼をしているのです。

そのフロアには40人強の従業員が働いていました。電話対応やパソコン業務で忙しくされていましたが、全員がいつも来客にするように私に挨拶してくださったのです。

訪問客への挨拶が徹底していることにびっくりし、思わず立ち止まってしばらく社内の様子を見てしまいました。いきいきと仕事に向かう姿はとてもすがすがしく、「こんな職場があるんだ」と感心しました。

いきいき働く従業員のヒミツ

物流スペース、倉庫、冷凍庫、食品企画提案ルームなども見学しました。どこへ行っても従業員一人ひとりの挨拶といきいき明るい姿が心地よく感じられました。

会議室に通され、額縁に入れて掲示されている「経営理念」が目に留まりました。
「経営理念を大切にされているんですね」と私が言うと、専務から説明がありました。

「今の会長が二代目社長になったとき(1985年)、従業員みんなで案を出して経営理念を作ったようです。当時は全社員で毎日唱和していました。現在は全社員が集まるのは無理なので、管理職だけの朝礼などで唱和しています」

経営理念には「お客様も社員も良くならないと意味がない」という経営方針が書かれていました。

人材育成に影響した?経営理念の3つの要素

従業員がいきいき明るく仕事する姿勢と経営理念との因果関係を論理的に説明することは難しいでしょう。

しかし、この会社の経営理念の3つの要素、
1.従業員みんなで考えたものであること
2.「お客様と社員が良くならないと意味がない」という内容
3.今も管理職が朝礼で唱和していること
これらが企業の風土や人材育成に良い影響を及ぼさないとは思えません。

従業員の想いが入った経営理念には、みんなで大切にしたい共通の価値観が入っています。
この経営理念が共有されることは、従業員がいきいき明るく仕事に向かうモチベーションにつながっているのではないでしょうか。

私が「企業理念の策定・浸透」にこだわる理由

今から30年以上も前に中小企業で素晴らしい取り組みがされていたことに驚かされます。
この会社を知り、経営理念の策定と浸透が企業の風土、人材育成に良い効果をもたらすことに確信をもちました。

実は、私が中小企業支援として力を入れたい分野の1つが「企業理念の策定、浸透支援」です。

企業理念は経営理念とほぼ同じ内容で、いずれも「企業にとって重要な考え方・価値観を明文化したもの」です。
あえて異なる点を挙げれば、経営理念は経営を行う際の基本となる考え方や価値観、創業者・経営者の思いを言葉で表したもの、企業理念は企業としての在り方や存在意義、目的などを示したものになります。

傾聴共感研究所では、経営課題解決型ワークショップとして、従業員参加の「企業理念の策定・浸透ワークショップ」を提案しています。ぜひご検討ください。