中小企業を元気にするセルフ・キャリアドック制度について

中小企業の人と組織を元気にする「セルフ・キャリアドック制度」をご紹介します。
今回は、中小企業にこそ必要な制度という視点でお伝えさせていただきます。

セルフ・キャリアドック制度を簡単に言うと

まず、簡単にセルフ・キャリアドック制度の内容を共有しておきましょう。

厚労省のパンフレットでは、
「キャリアコンサルティングとキャリア研修などを組み合わせて行う、従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的とした総合的な取組みのことです。」
と記載されています。

ポイントは「従業員のキャリア形成を促進・支援すること」ですが、
「キャリア形成」という言葉自体、つかみどころがない言葉ですね。

私の要約で簡単に説明すると
セルフ・キャリアドック制度とは、
「従業員が、イキイキと仕事をして、生きがいや働きがいを持つために企業が支援すること」

となります。

セルフ・キャリアドック制度が始まった理由

年功賃金制や終身雇用をベースとしたこれまでの人事制度が変化してきたことを背景に、2014年頃から「セルフ・キャリアドック構想」がスタートしたと言われています。

従来は、昇進、昇格、昇給そして定年退職という会社員生活の中で、従業員は自分の5年後、10年後のイメージを持つことがさほど難しくありませんでした。

私の若いころ(1980年代)は、先輩の様子から、何年くらいで昇格し、仕事の内容とそれに応じた職場、転勤するとしたら…など自分の可能性を感じながら、働き方、生き方を考えていました。

しかし、近年では「企業の構造改革、統廃合による人員整理」「転職・副業の流れ」など、一生涯同じ企業で働くことは、大企業においても普通ではなくなっています。その時々で、自分の働き方や生き方について見直す必要が大きくなってきているのです。

そこで、従業員の働き方・生き方について「個人まかせ」にしていた企業が、もっと支援するべきだという価値観が強まったのです。

2016年4月「改正職業能力開発促進法」には、「事業主がキャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うこと」という文言が明記され、企業としての支援の仕方(セルフ・キャリアドック制度)が法的に定められたと言われています。

中小企業がもっとイキイキ働ける環境であるために

これまで大企業では、人事制度としての評価・処遇や福利厚生・人材育成研修体制などが比較的しっかりしていました。
従業員は、自分の可能性を感じて、自分を成長させたいというモチベーションも生まれやすく、目標や自己研鑽のテーマも見つけやすい環境だったと言えます。

中小企業ではどうでしょうか?

私の中小企業での経験は、出向先と経営支援先での経験しかありませんが、どちらの会社でも「5年後、10年後のイメージと言われても…」と思いながら仕事に向き合う従業員が多かったのではと感じています。

中小企業は、「自分の働き方や生き方について、計画や目標を持ちにくい、自分の可能性を見いだしにくい環境である」。
そして、今も昔も「自分の働き方や生き方については、従業員まかせ、個人まかせになっている」というのは言い過ぎでしょうか?

私は、中小企業こそ、一人ひとりの従業員の働き方や生き方にもっとかかわること、セルフ・キャリアドック制度が必要だと思います。
そして、そのために従業員が「自分と向き合い、働き方や生き方について考えること」をもっと支援することが重要だと考えます。

中小企業にこそセルフ・キャリアドックが必要なワケ

企業が従業員に「自分と向き合うこと」を支援する方法の1つがキャリアコンサルティングです。

私は現在、キャリアコンサルティングを毎月行っています。
(人材開発支援助成金制度の訓練前ジョブカード活用キャリアコンサルティングが中心です)

対象は主に20代から30代の従業員ですが、特徴的な傾向があります。
それは、自分の経験や価値観について、自分の言葉で語ることが苦手な人が多いことです。

私は、「それは○○のようなことですか?」と質問することが少なくありません。
この「○○」の内容は、とても素敵だったり感心させられたりすることが多いのです。

私とのやりとりで、若者が自分の強みや可能性をより具体的に意識して、目の前の課題に意欲的に取り組んでくれることを願いながらキャリアコンサルティングを進めています。

老若男女問わず、自分のことを自分の言葉で語ることは難しいものです。
加えて、自分の強みや価値観についてあらためて考えて言葉にすることなど、めったにありません。

私は、中小企業において、そのような機会をつくることが、「従業員が、イキイキと仕事をして、生きがいや働きがいを持つために企業が関わること」の取り組みの1つだと考えます。

キャリアコンサルティングを通して、自分と向き合うことから仕事に対する意識が高まり、自己啓発を始めるきっかけになったり、上司・部下との意思疎通が良くなったり…このような効果も十分期待できます。

中小企業にこそ、「キャリアコンサルティングとキャリア研修などを組み合わせて行う、従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的とした総合的な取組み」であるセルフ・キャリアドック制度が必要だと考えます。